田んぼ電気プロジェクト音羽米発電所
「田んぼ電気プロジェクト音羽米発電所」は、愛知県豊川市(旧音羽町)の東海道赤坂宿周辺の、四方を山に囲まれた清流沿いの田んぼの畔でのソーラーシェアリングで発電を行っています。生産者である音羽米研究会の鈴木農場では、田んぼで作られたすべての再生可能エネルギーを組合員宅に電気として供給するため㈱生活クラブエナジーに売電し、米作り・精米作業に必要な電気も㈱生活クラブエナジーを通じて購入しています。
鈴木農場が中核をなす「音羽米研究会」には、現在100人を超えるメンバーがおり、町ぐるみで安全なお米を作り、地元と生活クラブ愛知にお米を出荷しています。生活クラブ愛知との提携は1990年から始まり、現在では田植え直後の除草剤以外は一切農薬を使わず、有機質肥料のみを使用するなど、きれいな湧き水で作付された安全性にこだわったお米作りを行っています。
ソーラーシェアリングを始めたきっかけ
(有)こだわり農場鈴木の鈴木晋示社長は、福島第1原発事故の際、収穫した麦から微量の放射能が検出されたことをきっかけに、「原発に頼らない電気で農業ができないか」との思いが芽生え、たまたま田んぼが隣合わせだった電気屋さんが始めたソーラーシェアリングを知ります。地目が山という条件のもと、斜面に平面の田んぼを作るために畔を広く(4mくらいに)取らなければならないこの地域に適していると考えたからです。
設置まで
初めは家族も含めソーラーシェアリングに対する理解が薄く、銀行などもお金を貸してくれませんでした。また今では当たり前にあるソーラーシェアリングへの保険もありませんでした。設置には莫大な費用もかかるため、従業員と家族を養う上でリスクを伴いましたが決断しました。設置に当たり田んぼは土に水分を多く含むので土台が腐らないように新幹線の枕木(コンクリート)を使いました。これは産業廃棄物で運搬料のみ支払い、1本230キロ、長さは2.2mあります。鈴木農場の田んぼにはソーラーの列が5列あり、その1列には20本以上の枕木が組まれています。この枕木を自分たちの手で1m以上の地中に埋めました。それぞれのソーラーパネルは晴れている日などは50kWの電力を生み出すことが可能です。
ソーラーシェアリングを始めてみて
現在、鈴木農場では50kWの電気を生み出すソーラーシェアリング3基(300坪の田んぼ2ヶ所と畑1ヶ所で計150kW)のほか、ライスセンターや精米所の屋根にあるソーラーパネル(計211kW)からの発電を合わせた計361kWの電気を㈱生活クラブエナジーに売電しています(普通の一般家庭で使われる一日の電力が3~4kW)。
設備費用は莫大でしたが固定価格買取制度により1kWhあたり36円で売電できるため、7年間で設備投資分(3500万円)は売電できました。将来における安定した収入を得られることは、天候などの条件によって容易に収穫が変動する農業を営む上でも重要です。大量のソーラーパネルで日陰が作られるため1割の収穫減となりますが、この減収は大きな影響はなく、またソーラーシェアリングを行う上で法律上は2割の収穫減までは認められているので、特に問題はありません。
ソーラーシェアリングを始めてから多くの方が見学にみえます。多くの農家の方々が各々の農地に合った形でのソーラーシェアリングを始めることでさらに安全で確かな電力が生み出され、それが消費者のもとに届けられることを願っています。今後は、志を同じくする地域の他の米生産者にも参加を呼びかけ、地域全体で大規模太陽光発電所(メガソーラー)に匹敵する1,000kW以上の売電規模を目指す考えです。電気の供給事業で地域農業を支えていきたいと考えています。