酪農を元気にする再生可能エネルギー
2023年5月、生活クラブでんきの生産者では初の「バイオガス発電」から電気の供給が開始されました。
北海道の阿寒町に建設されたこのバイオガス発電所は、酪農から出る牛のふん尿が発電の原料。これを発酵させたガスを燃焼させることで発電します。CO2を吸収して成長する植物を食べて成長した家畜のふん尿を主原料にすることから、新たに大気中に放出されるCO2は抑えられる発電方法です。
発電所は敷地面積約62,000㎡、飼育頭数1,200頭という大規模酪農施設(株)天翔阿寒の敷地内に建設されました。ここで発電された電気は、酪農施設で自家消費し、一部を生活クラブでんきが購入。生活クラブでんきを契約する組合員や事業所に供給されます。
また、このバイオガス発電所の運営会社(株)阿寒マイクログリッドへ、生活クラブ北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、山梨と連合会が出資しています。
設備はガス発電機3基、太陽光発電1基からなり、年間約120世帯分にあたる電力が発電できます。牛のふん尿の回収から発電まで、人の手がかからない自動制御化されています。また、発電の副産物を資源として有効活用し、経費の削減に役立てているのもこの施設の特徴。例えば発電の排熱を乳牛の飲み水の加温に利用、発酵の残渣の固形分は再生敷料に、液体分は液肥として農業に利用されます。
非常時に地域を支える電源としても活躍
当発電所は「地域マイクログリッド」を構成していることも特徴です。地域マイクログリッドとは大規模発電所の電力供給に頼らず、地域のなかで再生可能エネルギーの地産地消ができる小規模なエネルギーネットワークのこと。この発電所周辺では、平常時には既存の配電網で電気を供給しますが、非常時には発電所の周囲約4kmの範囲の酪農家14軒、民家25軒、市の指定避難所1軒に送電網を形成し送電するしくみになっています。
これは2018年、胆振東部地震でブラックアウト(全域停電)という苦い経験を踏まえてのこと。酪農が盛んなこの地域では当時、生乳が冷蔵保管できずに廃棄したり、搾乳ができないために牛に乳房炎が発生したり、多くの酪農家が大打撃を受けました。マイクログリッドの機能を併せ持つことにより、災害時への備えが前進することになりました。
当発電所は酪農の振興とその地域へ貢献が期待できます。生活クラブでんきでは、今後もこのように電気を介して発電所のある地域に益となる事業をすすめ、再生可能エネルギーの普及に努めていきます。
<釧路市阿寒町における地域マイクログリッド構築事業 発電所概要>
■ 発電の方式:牛1,200頭分の糞尿63.2t/日を発酵させて得たメタンガスを使い発電機を回す。
- メタンガス日量:約1,300N㎥
- ガス発電機合計出力:3基 計216kW
- 他に160kW規模の太陽光発電設備(自家消費専用)も併設。
■ 発電機出力
- ガス発電機A(出力166.0kW)1基:自家消費+ガス産出プラント内消費+余剰売電用)
- ガス発電機B(出力25kW)2基 :低圧FITで生活クラブエナジーに売電
- 太陽光発電(出力160kW):自家消費+余剰売電用
■マイクログリッド利用施設
- 釧路市指定避難所1か所、周辺地区の大小酪農施設14軒、民家25世帯